ynozaki2024の日記

私的回想:川口大三郎の死と早稲田解放闘争

【Xスペース】 映画『ゲバルトの杜』について語ろう!2024年7月26日

2024年7月26日:オープン・トーク・セッションのご意見のあらまし

 

(1)映画『ゲバルトの杜』への即時的意見

1)山村政明氏焼身自殺事件に触れられていない。

2)川口君リンチ殺害に至る嫌疑「スパイ説」は樋田本でも否定されているのに、短編劇で描かれているのは解せない。

3)革マル派、すごい、勝利!と受け止められている。監督も演出家も早稲田出身なのに、革マル派に好意的すぎる。

4)自治会再建運動の扱いが小さい。

 

(2)短編劇への意見

1)鴻上氏は「ヘルメットの君に会いたい」と云うラブレターの延長で作っている。商業演劇と分かってやっている。

2)実行犯の一人、佐竹自己批判書の扱いは、映画としては失敗で、演出家の問題。

3)佐竹自己批判書は田中(当時、一文革マル派自治会委員長)の自己批判書と同じ内容で、公安警察に都合よく作られている。

4)実行犯の村上が著書で自分はロボットであったと書いた。それがああいう心臓マッサージをするはずがない。

5)鴻上演出家は早稲田大学革マル派系の新聞に、かつて取材を受けて掲載されている。

 

(2)暴力について

1)ベトナム反戦、街頭行動もあって、政治的状況など、暴力が肯定されていた時代。暴力が悪いという前提で語られている。

2)暴力vs非暴力、の問題ではない。大学と革マル派が一体化した構造的暴力。そもそも非対称なのは明らか。

3)暴力の問題は中身の問題。抵抗暴力もあるし、テロはやらないとか私怨に走らないとか。

4)他大学で某党派と対峙したが、学内リンチなど、このような政治的暴力は初めて見た。

 

(3)当時の状況

1)連合赤軍事件で日本の新左翼は召喚したと言われているが、実際はその前に皆やめていて、それを口実に全共闘本などへのアンケートに答えている。しかし、早大解放闘争はその後にあれだけの大衆運動が起きている。

2)戦後学生運動史で言えば早稲田はその「雄」。自治会費代行徴収、早大はそれが大きかった。革マル派は死守した。川口君はゴリゴリの活動家ではなく大衆から信頼を得るような人物だったから逆に脅威で、それゆえに革マル派は組織的方針として狙ったはず。根本、藤原が指示したはず。

3)同じ時期、「人民連帯」の活動家が重体、パンツひとつで血だらけで文学部から逃げた奴もいたし、何人もやられていた。川口君は阿波崎「君」が連行したが、川口君も脇が甘い。

4)1971年の沖縄での民青派による革マル派町田殺害で、共産党は「新日和見主義派」査問の時期。当時は共産党は表立って動けなかった。早大ベトナムに平和を市民連合」も4号館から革マル派に追い出され、ブント系もやられた。人が死んでもおかしくない状況だった。

5)WACが京都まで情宣に来て接待した。彼らもその後の方針についてはどうしていいか分からないようだった。

6)川口君事件がその後の内ゲバの発端というのは違う。1973年3月までは自治会再建運動だ。大学と革マル派のやりとりはあっただろうし、民青の台頭は合意してやめさせただろう。党派衝突も、1973年6月までは、50人、60人単位の早大内部での抗争。7月には野崎さん達のアレがあったけど。9月以降は段階が違う。革マル派はそれまでの突撃隊に加えて1500人の全学連から武装要員を人選し、WACへのデパート屋上襲撃など、一斉に攻勢に出た。

7)立花隆の『中核派vs革マル派』は中核機関紙の丸写しである。

 

(4)総論的意見

1)今こそ議論できる時代になったので、その歴史の教訓を生かすべき時に来た。

2)「無意味な死」とは言えない。それは教訓化できるはずの自己を抑制する。「いけねー、このままでは同じになる」など、後の時代の活動家への教訓は残る。連合赤軍事件を、組織が煮詰まるとああなる、と教訓化しているNPO、障害者運動の人々もいる。

3)日本軍国主義に騙されていたとか、やられたとか被害者・差別を受けた側に身を置くのは、奴隷の立場であり、批評にならない。

4)上映阻止とかDVD化反対とか、そういうのは良くない。論じ合い、批判的に見る見方の向上を図るべき。

5)早稲田大学の学生当事者にとって、半世紀がたっても「終わっていない」のが印象的。

 

 以上が聞いた内容をメモして分析したものです。

 

 大変濃い内容で、河原さんもたびたび言ってましたが、背景情報を知らないと分からない内輪の懇談会でした。オープンですから、やむを得ないでしょう。

 50数年と言えば、日本の戦後で言えば1995年頃、イエスが処刑されてから50年前後で福音書が記され始めています。

 

 ここには三つの層の情報が渾然となっています。

A 当事者やその周辺が語ること。

B 同時代者が付加する、運動の社会的背景・影響。

C 批評的にまとめて、後世への継承として「贈る言葉

 

 いつまでもAやBをやっていると、なかなかCまで辿り着けませんね。

 しかし大事なのはAとBの人々の謙虚な連帯でしょう。それなくしてはCが出て来ません。AとBの人間がいつまでもごちゃごちゃ偉そうにやっていると、次世代のせっかく関心を深めてくれている人々が口を閉ざしてしまいます。

 

 せっかく樋田君が著書を世に送ってくれ、代島監督が映画化してくれました。賛否が燎原の火のように広がることがとても大切だと思います。まずはAとBの人間がしっかりと、内ゲバなどやらずにですが、出すべき情報や意見を出し、その上で建設的なCの段階へと進めていくのが妥当な戦略でしょう。そこまでいったら、もっと良い著作(共著でも)や映画がまた世に送り出せるかもしれません。

 河原さん、頑張ってください。応援しています。

 

追伸 明日の日曜日午後からは、中川さん・水谷さんの対談です。私も馳せ参じて聞きます。