ynozaki2024の日記

私的回想:川口大三郎の死と早稲田解放闘争

2024-01-01から1年間の記事一覧

『全共闘晩期』5:川口大三郎の神話化、もしくは記憶の独占について

「世界と人間が隷従しているところの彼岸の力について語るべき神話本来の意図が、その発言の客観化する性格によって阻まれ、かつ覆われている限り、神話自体が自己自身を、すなわち、その客観化する諸現象を批判する動因を内に含んでいるのである。」(ルド…

『全共闘晩期』4:(続)全共闘ポツダム自治会粉砕論と早稲田解放闘争

「発行者:早稲田大学第一文学部自治会執行委員会、編集:一文新入生歓迎実行委員会、連絡先:第一文学部自治会室、発行:1973年4月2日」と奥付きにあるパンフレットがある。60ページほどの『彼は早稲田で死んだ』である。新歓実行委員長として私が編集した…

『全共闘晩期』3:全共闘ポツダム自治会粉砕論と早稲田解放闘争

この本の中で、革マル派自治会をリコールして圧倒的多数で選出された各学部の臨時執行部の、早大学生自治会再建闘争に言及しているのは、津村喬(第二次早大闘争、早大反戦連合・全共闘)・菅孝之(再建社学同)・水谷保孝(第一次早大闘争、中核派全学連書…

『全共闘晩期』2:自治会費代行徴収と新自治会

先日(2024年11月28日)、『ゲバルトの杜』のDVD発売記念として、代島監督と樋田毅君のトークが高田馬場・芳林堂を会場としてあった。その際、樋田君が大変重要な事を述べた。それは、革マル派が早稲田大学から追われる事になる少し前、民青系の法学部学生自…

『全共闘晩期』1 はじめに

樋田毅著『彼は早稲田で死んだー大学構内リンチ殺人事件の永遠』が2021年11月に上梓され、2022年11月の川口大三郎没後50年の前後に代島治彦監督は取材を続けていた。没後50年追悼集会は2022年11月4日に全学関係者約90人で、11月8日には文学部関係者約30人で…

絓秀実・花咲政之輔編著『全共闘晩期ー川口大三郎事件からSEALDs以後』(航思社、2024年12月10日)

一通り全部読んだので、これから少しずつ考えながら講評をしたい。 津村喬の文章が二つあったので、ついそれを先に読まざるを得なかった。この本の中では例外的に当時の文章である。懐かしさもあって、そして津村がこんな事を書いていたのかと云う驚きもあっ…

五十嵐良雄のこと

あの早稲田解放闘争の最中で、なぜ私たちは自主講座運動をやっていたのか。 諸党派は学生自治会を奪還するという、即時的な目標を持っていた。(いや、厳密に言えば、諸党派や元全共闘は自治会再建は本気ではなかった。)それをまずやらねば、川口君事件はま…

津村喬「早稲田は誰に住みよいか」『全共闘晩期・川口大三郎事件からSEALDs以後』(航思社、2024年12月10日)

この本に同じく再掲されている津村の「粱政明の死」は当時読んだ。ところが、この「早稲田は誰に住みよいか」は、迂闊な事に今回初めて読んだ。ちょうど51年前の文章だが、文字どおり昨日の事のように読める。「ただの正義派」の一人だった私は、津村のこの…

『ゲバルトの杜』DVD発売記念トーク集会・代島治彦vs樋田毅。2024年11月28日、高田馬場芳林堂。

大きな会場かと思ったら20数人でいっぱいのイベント会場だった。椅子に申し込み順の背番号が振られており、私は3番。右隣の4番は偶然ながら川崎恭治君だった。1番はなんと4126mineさん。振り向くとどなたも浅黒い政治的に不幸な顔をした年配の男性が多く、…

36年ぶり、かつ6時間45分。川崎恭治君と話せた。

最初に会ったのは1979年頃、最後に会ったのは、川崎君が30歳、私が39歳の頃で、1988年あたりであったようだ。それも二人であれこれ計算しての事で、詳らかでもない。 だが、この日曜日に会ってから別れるまで、6時間45分、ほとんどのべつ語り合っていた。年…

川崎恭治君のこと、或いは雑誌『情況』への願い

彼は、彼の書いたものが掲載された『情況』夏号を、私の元勤務先の大学にに送付したそうだ。もう何年も前に退職した。返答はなかった。 そして各方面へ私の連絡先を求めてコンタクトし、ようやく、7.6『ゲバ杜』徹底批判集会の花咲さんから私へそのメールが…

白坂リサ「『ゲバ杜』徹底批判シンポジウム報告」(『情況』2024年夏)

このシンポジウムの内容は、出版企画が進んでいて、『情況』誌としてはあまり踏み込めず「雰囲気」を報告するにとどまっている。実際問題としても、あれだけ多様な視点・論点が展開されたので数ページに納めるのも無理である。主催側にも「上映阻止」まで言…

川崎恭治「早稲田の記憶 川口君事件・解放闘争終息以降」(『情況』2024年夏)

川崎恭治君は1977年早稲田大学社会科学部入学、1980年中退とある。中退する前の頃、友人を介して私は会った事がある。革マル派に支配された大学で自主的活動をし、狙われていて危ないと云う事で、どうしたものかと藁をもすがる思いだったようだ。1973年頃、…

樋田毅『旧統一教会 大江益夫・元広報部長懺悔録』(光文社新書、2024年8月30日)

本来、川口大三郎君の死と旧統一教会は重なることではない。しかし統一教会は執拗にそれを脚色した。 それは、彼の中国語クラス2J周辺に、彼を狭山裁判闘争に誘った中核派に近い者(本人は『ゲバルトの杜』や複数の論文の中で川口君の死について中核派の見解…

杉本達夫「2Jの級友達の怒りの激しさが、彼の信望を語っていよう」(早大一文中国語担当) 、1972年11月30日。

私たちが構築してきた「一文アーカイブ」(川口大三郎の死と早稲田大学)に一人の教員の書いたものがある。川口君の死から三週間後である。 当時、私たち中国語クラスは2Jと2Tだけだった。教員は、芦田、長谷川、松浦、杉本の四人が語学を教えていた。杉本…

井出匠:映画評

「映画の途中までは、革マルの暴力支配、およびそれを利用した早大当局の学内管理体制にたいするノンセクト学生の抗議が主題だったにもかかわらず、途中からなぜかセクト間の内ゲバの話にすり替わってしまい、けっきょく「内ゲバって怖いね、暴力はよくない…

樋田毅著『最後の社主 朝日新聞が秘封した『御影の令嬢』へのレクイエム』(講談社、2020年3月)、其の二

とても大切なこと。 それは、川口君殺害実行犯の一人であるSが、樋田君の取材に対してかなり心を開いた事なのだ。最初は警戒していた。やがて、堰を切ったように語った。 ここは、私は心から樋田君のご尽力とその取材能力に敬服している。 だが、Sは逡巡の末…

樋田毅著『最後の社主 朝日新聞が秘封した『御影の令嬢』へのレクイエム』(講談社、2020年3月)

この本について、朝日新聞社から抗議文が出ていたのを知らなかった。 やはり、退職後でも記者には守秘義務があるようだ。それ違反と、プライパシー侵害であるとの抗議である。 『彼は早稲田で死んだ』の取材過程で得た、川口君殺害実行犯の佐々木の証言メモ…

『ゲバルトの杜』が描かなかった「内ゲバ」の真実 白ヘルvs.黒ヘル ガチの「内ゲバ」対談2024.7.28 @南阿佐ヶ谷:其の二

追記 中川文人氏が追加でツイッター上に書かれていますので、転載します。 ここの部分のご発言は一つの意見として(異論はありますが)よく分かります。重要な事なので、私のブログを見ておられる方全てが目にするわけでもないでしょうから、公平を期す為に…

『ゲバルトの杜』が描かなかった「内ゲバ」の真実 白ヘルvs.黒ヘル ガチの「内ゲバ」対談2024.7.28 @南阿佐ヶ谷

本日、対談開始の前、主催側の提案により、川口大三郎君を忍ぶ黙祷が行われた。 これは、当事者の私たちとしてもこのようなイベントで行われるのは異例の事で、主催者の皆さんの真摯な姿勢に深く心を動かされた。 水谷保孝氏と中川文人氏の対談。WEB上では以…

【Xスペース】 映画『ゲバルトの杜』について語ろう!2024年7月26日

2024年7月26日:オープン・トーク・セッションのご意見のあらまし (1)映画『ゲバルトの杜』への即時的意見 1)山村政明氏焼身自殺事件に触れられていない。 2)川口君リンチ殺害に至る嫌疑「スパイ説」は樋田本でも否定されているのに、短編劇で描かれ…

代島治彦論ー「鎮魂とは何かー犠牲者で括るのは是か非か」

代島治彦監督のこの映画における鎮魂についていくつか書いてきた。最近、プレスリリース用の2月の最初の映画パンフ(モノクロ)を見ていたら、表紙の裏に「鎮魂 代島治彦」とサインがあるのに気がついた。 どうやらそれが彼にとってのキーワードであるようだ…

横山茂彦「解説 ウクライナ戦争論争」『情況』(2024年春号)

この『情況』2024春号を『ゲバルトの杜』映画評が載っていたので買った。ついでにパラパラと見た。私は左翼の理論とか歴史とかには興味がない。それで面白いと思ったのは「食」の特集だった。私は料理が趣味だから気になった。いっその事、全部「食」の雑誌…

絓秀実「『絶望』と隣り合う『希望』とは如何なる謂か?ー代島治彦『ゲバ杜』とその言説・徹底批判」、2024年7月6日、配布資料。

絓秀実氏が当日配布したのは、「『絶望』と隣り合う『希望』とは如何なる謂か?ー代島治彦『ゲバ杜』とその言説・徹底批判」である。8ページほどある。これは『映画芸術』(夏号)に掲載予定らしいので、ここでは巨細にわたって批評することは遠慮したい。 …

佐藤優書評・『彼は早稲田で死んだ』(『週刊現代』2021年12月4日号掲載)

『彼は早稲田で死んだ』が2021年11月に出版され、翌月の『週刊現代』に佐藤優氏が書評を寄せている。大変好意的に書いており、その後の大宅壮一ノンフィクション賞の審査員として佐藤優氏が強く推したとも聞いている。 この書評では冒頭に樋田君が革マル派に…

「映画『ゲバルトの杜』を徹底批判するシンポジウム」2024年7月6日、@新宿区角筈地域センター:其の二

照山もみじ氏が、『キャンパス新聞』の資料を見て、平田君や永嶋君らの対談に、解放闘争がとても明るい感じで語られているのに感心していた。私はそれも読んだからいつの時期の『キャンパス新聞』かも、紙面の段組みまでよく知っている。その通り、リコール…

「映画『ゲバルトの杜』を徹底批判するシンポジウム」2024年7月6日、@新宿区角筈地域センター

パネリスト:絓秀実、菅孝行、大野左紀子、照山もみじ(金子亜佑美)、河原省吾、花咲政之輔。 主催者やパネリストを合わせると100人ほどが集まった盛会であった。多くは日大闘争組を含む70歳前後の頭の白い者で、あとは『情況』編集部の若者や花咲組と思わ…

採録シナリオ:『ゲバルトの杜ー彼は早稲田で死んだ』編集発行;ノンデライコ 、2024年5月24日

映画パンフは、初版はモノクロで非売品だった。それが5月にカラー版になって内容も増補されて市販されるものになった。そのどちらにしても、採録シナリオは同じである。 劇のリンチの場面があるのだが、それは樋田君が革マル派のSに取材した内容をもとにして…

樋田毅「『左翼的な気分』は何処へ」創刊100周年特別企画①共産党、社会党、新左翼・・・彼らは何を残し、何を壊したのか(『文藝春秋』2022年八月特別号)

『文藝春秋』のこの特別企画①は五本の原稿で構成されている。 (1)日本左翼100年の総括ー池上彰×佐藤優 (2)宮本顕治と不破哲三ー筆坂秀世 (3)「私党」重信房子と日本赤軍ー田原牧 (4)「左翼的な気分は何処へ」ー樋田毅 (5)日本共産党と文藝春…

樋田毅『彼は早稲田で死んだー大学構内リンチ殺人事件の永遠』(文藝春秋、単行本・2019年、文庫本・2024年)

この本についての批評は語り尽くした感がある。そこで、いくつかのご質問が来たりしたので、この本で書かれていない事、付加的に書かれている事について、簡単に記しておきたい。 まず、書かれていないことで大きいのは、何と言っても統一教会・勝共連合につ…